2018/04/28
NHK Eテレ 新世代が解く!ニッポンのジレンマに主宰の東が出演しました。精いっぱい気鋭の論客っぽい顔をしてきました。
2018/04/27
無駄づくりの藤原麻里菜さん、デイリーポータルZの林雄司さんの番組 エンタメ~テレ よい子はマネしないでねにメンバーの東、時田、高田が出演しました。
2018/04/21
第3回Webメディアびっくりセールに『ツイッター下書きガチャ』、『パワーキーボード』、『SNSの画面をくしゃくしゃに丸めて投げられるサイト』(藤原麻里菜さんとの共作)を出展しました。
2018/03/11
テキサス・オースティンで行われる大規模イベント South by Southwest(SXSW)に『ブラジルにつながってる穴』を出展しました。
2017/11/18
第2回Webメディアびっくりセールに『ブラジルにつながってる穴』を出展しました。そのときの記事はこちら
2017/11/22
日経MJ紙に『ブラジルにつながってる穴』が掲載されました。まさかの防災特集でした。
Eyecatch

周りの人がVRヘッドセットを被っているときに感じる漠然とした気まずさと不安を解決するため、『消えるVR』(Vanishment Reality) を提案し、光学迷彩技術を用いて実現する。

話題のVRヘッドセットをついに手に入れた。PCを繋いだりスマホを差し込んだりする必要もないタイプなので、いつでもどこでもVRの世界に没入できる。さっそく友達に自慢したり遊ばせたりしていたところ、VRの抱える根本的な問題に気づいた。

VRの抱える構造的欠陥、公共の場での気まずさ

一人がVRを楽しんでいるのを外から見ている間、いや、たとえ注目してなかったとしても、「その場にVRをやってる人がいる」という状況に対して全員、一抹のなんとも言えない、不安にも似た違和感を抱くのだ。やってる側としても、自分がどのように見られているのかわからない不安があるため、心から没入できないのだ。

思えば、2045年のVRをテーマにした映画『レディ・プレイヤー1』を見たときの違和感もそうだった。主人公たちはVRディスプレイを装着して精神は仮想現実の世界に飛び込むのだが、身体のほうはそのまま(ゴムのひもに体を吊るしたり、つるつる滑る床の装置を用意して)同じ場所で足踏みしたりしたり腕を振り回したりしているのだ。VRの世界でいくら勇猛に戦いを繰り広げていても、その様子を外から眺めてるとどうやっても「一人で叫んで暴れてる人」になってしまうのだ。2045年まで待たなくても、季節の変わり目にこういうVRをやってる人はよく見る。作中でもその様子はちょっと引いた視点で滑稽に描かれていたし、なんなら発生する問題も4割ぐらいはこれが原因で起こっていた気がする。

つまり、精神はVRの世界にいるのに、肉体の方が現実世界に置いてけぼりにされているのだ。2045年にもなってそんな体たらくでいいはずがあるだろうか、いや、ない。

我々の直面している問題を図解すると以下のようになる。

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電車で電話してる人に感じる漠然とした不安と近いものがある

一言で言うと、VRにログインするにあたっては、現実からログアウトする必要があったのだ。

そういうわけで、VRをやっている間は現実世界から消えてなくなるための仕組み、消えるVR (Vanishment Reality) を実現することにした。

光学迷彩を利用して「消えるVR」を実践する

まず、消える方法を考えなければならない。ここでは東京大学の稲見教授・館教授たちの発表した『光学迷彩』の手法を丸パクリしようと思う。東大に入るのはとても難しいが、研究成果の論文はネットでダウンロードできるので勝手にアイデアを拝借するだけでも賢くなった気がするからおすすめだ。うまくいかなくても東大のせいにできる点も見逃せない。

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細かいことはよくわからないがヴァイブスで感じ取る

論文の英語は飛ばして、図の部分だけ見て仕組みをなんとなく把握する。「再帰性反射材とハーフミラーが必要」という情報をもとにネットで買う。

再帰性反射材とは、光の向かってきたのと同じ方向に対して光を反射する性質を持つ素材である。こういうと難しそうだが、工事のおっちゃんが着ている作業着のよく光る部分やママチャリの後ろ側についている反射板と同じ仕組みだ。全面これで出来た服というものが売っているので、買う。

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    アメリカの自転車スポーツブランドのWebショップで15,000円だった。今のところ自転車スポーツをやる予定はない

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    iPhoneのフラッシュを焚くとこのようにまばゆく光る。正直こんなに光る必要ないなってぐらい光る

ハーフミラーというのは、マジックミラーの名でも知られる、明るい側からは反射して見えるが暗い側からは透過して見える鏡である。これもアクリル板などを売っているWebショップのはざい屋で2000円ぐらいで手に入った。

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    会社にマジックミラーが届くとなぜか周囲が少しざわざわする。

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    再帰性反射材のシートを注文し、VR用のディスプレイにも全面に貼り付ける。こちらは専用の型紙を作ってくれた人がいたので、ありがたく使わせてもらう。

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    誰もいないソファの写真を撮り、ソファに合わせて微妙にずらしながらプロジェクターで投影する。このとき45度のハーフミラーで反射させて投影する必要があるので、写真は前もって左右反転させておく。

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    Macに最初から入っているプレビューアプリで微妙にスクロールや拡大しながら調整して投影する。ここからは職人技の世界だ

ついに完成

準備はできた。ここに再帰性反射材のジャケットを着て座ると…

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    消えた…? 消え……た! はい消えました!! ログアウト!!

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    雑談してる横でVRやってても気にならない!

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    本棚の前で遊んでても見えないから邪魔にならない!

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    商談の最中にVRに現実逃避してても大丈夫!

そんなわけない

見ればわかると思うが、そんなに簡単に人が消えるわけがない。商談の最中にこんなことしてるやつがいる会社は遅かれ早かれ丸ごと消失することだろう。言わずもがな、何も見えていないていで演技してもらったのだ。

とはいえ、シリコンバレーのベンチャー企業のデモとかも出来てないアプリを出来たていで見せていることも多い。大事なのは未来のビジョンを伝えるコンセプトである。完成度については今後の課題とさせてもらおう。

わかったこと

実際に試してみたことでわかったことは2つある。

まずこの手法の問題として、ある一点から見たときしか消えたように見えない。投影された光が鮮やかに見える(つまり、人が消えて見える)のはハーフミラー越しのある角度からみたときだけなので、他の場所から見てる人からは丸見えなのだ。

次に、この再帰性反射材のジャケットはめちゃくちゃ暑い、ということだ。常に風にさらされる自転車ライダー用に作られているので、熱を逃がさなさがすごい。初夏の6月でも数分の着用が限度であった。

一方で、この再帰性反射材ジャケットはべらぼうに光を跳ね返すことがわかったので、今回のように強い光の出るプロジェクターではなく、電池で動くモバイルタイプのミニプロジェクターでも充分に使えそうだということがわかった。

幸い、そういうモバイルプロジェクター端末にはAndroidが入っている。今回はコードを一行も書かずに完成させてしまったが(書けなかったのではない、書かなかったのだ)、リアルタイム画像認識と組み合わせることで屋外でも消失可能な環境が構築できそうだ。

まとめ

何はともあれ、これで「人がVRを使ってるときの気まずい雰囲気問題の解決」の分野での第一人者に登り詰めたといっても過言ではないだろう。スティーブン・スピルバーグもこれを参考に、『レディ・プレイヤー2』には消えるVRを取り入れてもらいたい。

この方法の他にも消失の実現方法を検討中である。より大胆かつ精密に進化する消えるVRを楽しみにしておいてほしい。

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    さらっと作ったように見えるが、例に漏れず1ヶ月ぐらいかかった。日が暮れて外は6月の雨が降っていた

  • 東信伍 (コンセプト、デザイン、装置製作)
  • 高田徹 (技術補助、出演)
  • 菅原隆大 (出演)
  • 参考文献: Masahiko INAMI, Naoki KAWAKAMI and Susumu TACHI (2003)
    "Optical Camouflage Using Retro-reflective Projection Technology"
  • 撮影場所提供: 株式会社メルタ
Eyecatch

無駄なものを作るメイカーとして活躍する藤原麻里菜さんとの合作として、腹の立つSNSの画面をくしゃくしゃに丸めて飛ばせるサイトを作った。

事の起こりは3ヶ月前、藤原麻里菜さんとデイリーポータルZの林雄司さんが司会を務める番組『よい子はマネしないでね』にImage Clubとして出演させてもらった。(収録自体はガチガチに緊張して終始よくわからないことを口走っていた記憶がある。放送は怖くてまだ見られていない)

後日打ち上げで藤原さんと「なんか一緒に作りましょうよ!」と盛り上がっていたが、このお酒の場での「なんか面白いことしましょう」が実現する確率はほぼ0に等しいと数学で習った。ところが後日ほんとに作ることになったのがこの「SNSの画面をくしゃくしゃに丸めて飛ばせるサイト」だ。奇跡の産物と言っても過言ではないだろう。実物ではなくWebサイトなので、実際にここで試すことができる。

これがどのようなものか、説明をしようにもほとんどタイトル通りの内容なのだが、「SNSなどを見ていると流れてくる知り合いの幸せそうな様子、腹の立つコメントなどを丸めて遠くに放り投げることでストレスを解消する」というコンセプトのサイトだ。コンプレックスとルサンチマンを作品に転化する彼女のスタイルと相性の良いコンセプトになった。

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実際にサイトを開くのが面倒くさい人のためのダイジェスト

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    飛ばしたいスクリーンショットを選択する。別にスクリーンショットじゃなくても、画像なら何でも投げられる。結婚前夜に昔の恋人の写真を投げるなどの用途にも使える

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    紙のようにくしゃっと丸まるので(ここのアルゴリズムに苦戦した)

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    画面をスクロールする要領でなぞると、怒りの強さ(スクロール速度)に応じて遠く彼方へ飛んでいく

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    飛距離が表示されて「Excellent Shot!」と褒めてもらえる。大人になるとものを投げて褒めてもらえることなどない

4月21日に行われた『第3回ウェブメディアびっくりセール』でも、このサイトを体験できるように展示を行った。ありがたいことに、前回デカくて目立つものを展示したので主催のデイリーポータルZの方々が気を利かせて入口の目の前にブースを配置してくれた。大勢のウェブメディア好きの来場者が入場して最初に見るものが「SNSを丸めて投げる」ではラディカルに過ぎやしないかと不安だったが、みな多かれ少なかれSNSを丸めて投げたい欲求を抱えていたらしく、笑顔で楽しんでくれた。それはそれで心配という気もする。

今回の制作のために3D空間でものを投げるプログラミングを身につけたので、大抵の3Dデータは投げられるようになった。今後は結婚式のブーケ、アメリカの卒業式の四角い帽子などを投げていきたい。

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    当日、思いつきで画面を縦にしたらしっくりきた。「人が食ってる寿司」「知らない飲み会の知らない濃いメンツ」などの画面を投げられるようにした

  • 6

    来場者は口々に爽快感を述べており、人の役に立ててよかったと共に少し心配になった

藤原麻里菜さんの記事はこちら
インターネットをクシャクシャにしてストレス発散したい - デイリーポータルZ

Eyecatch

去年作った『ブラジルにつながってる穴』を、アメリカの誇る一大フェスイベント・SXSWに出展することになってしまった。結論から言うと、むしろ日本で展示するよりウケた。

Image Clubの作品にブラジルにつながってる穴がある。 芝生に空いている穴に頭を突っ込むと地球の反対側であるブラジルが見えるという、冗談をそのまま実装したような作品だ。

いろいろあってアメリカに

去年(2017年)の10月にほぼ完成して次の月にWebメディアびっくりセールで初めてお披露目させてもらった。 それから一部の変わったメディアに取り上げられるということがあったが、驚いたことにテキサスで開催されるSXSWに出ないか? という打診があった。なんなんだこれは。騙されているんじゃないか? いや、むしろ自分たちが騙してしまっているんじゃないだろうか、悪いことをしてしまった。いや、それとも本当に価値があるヤバいものを作ってしまったんだろうか……だとしたら出ない方が反価値的、ということは世に出すことが僕らの使命なのかもしれない。

SXSWはアメリカテキサス州のオースティンで行われているイベントで、音楽系、映画系、インタラクティブ系の3つの分野に分かれていて、世界中からアイデアを披露したい人が集まってカンファレンスを開いたり、ライブをしたり、展示をしているイベントだ。 中心となる展示会場はあるものの、街中のいたるところにイベントが分散して同時開催されているため全容を把握できる人はいないと思われる。 その中で今回参加したのはインタラクティブ部門のトレードショーという展示会である。

なぜそんな事になったかというと、穴はもともと株式会社レイ rabo の協力があって実装にこぎつけられた作品なので正確には協業作品である。SXSWへはレイが出展するのだが、その展示物の一つとして穴が選ばれたというわけだ。ちなみに僕自身はImage Clubの人でもありレイの社員でもあるが、この記事ではImage Club側の目線で説明する。

出展する穴は、今回は東京と京都の映像を仕込んでおいたので「日本につながってる穴」とした。 穴に頭を突っ込んだら地球の向こう側が見える。簡潔。しかしアイデアどころか冗談でしかない。(大丈夫だろうか…)

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地球を貫通している穴(のつもり)。内側はプロジェクターで映像を出している

いざエンターテイメントの本場、アメリカへ

現地に入るのは僕含めて4人、日程は仕込み日2日間とトレードショー4日間。 ただし僕が参加できるのは展示前半の2日間のみだったため、今までなんとなくやっていた組み立て、調整、撤去をすべて僕以外の人でも扱えるように手順化しなければならない。 プログラムは無駄なインターフェイスを省き扱いやすくした。 鉄のフレームはネジが数十本あって組み立て方にもコツが必要なので、何度か組み立て・調整・バラしを実際に行って現場で困らないように練習した。

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ウェブメディアびっくりセールの時の写真。全てボルト固定だが、意外と精密さが要求される

現地入りしたのは夜だったので仕込みは参加できず、少しだけ周りの様子を見に行った。 SXSW自体はトレードショー前から始まっているのだが、既に街がフェスみたいな感じになっている。

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    祭りの規模がでかい。照明がムーディー。さすがディズニーランドを生んだ国だけある

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    カラーコーンも日本のものより高い

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    街中ではいつも音楽が演奏されており、

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    食べ物は基本タダ。ほぼ「昔の人が考えた天国」だ

穴はアメリカでも通用した

展示。

今回も地面に埋めることはできないので、せめて側面まで芝生で覆ってある。

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一番左のやつが穴

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プロジェクタの焦点距離を稼ぐために内部に4面のミラーを配置している。外から見えない部分が一番フォトジェニック

面白いほど頭を突っ込んでもらえる。 反応は様々だったが見た人よりも見ている人が笑っていることも多く、そこはイメージしていた通りだった。

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    わりと盛況

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    親の後ろ姿を見る子供

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    なぜかVRディスプレイを被ったままの人。英語を勉強したいと思った

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    口をポカーンと開けて見ている人

感想

お客さんは途切れることがなかったが、時間を作って辺りを見てみるとインパクトも押しも強いブースが沢山ある。 特に日本のブースは活気がある。ロボットアームで寿司データから寿司を作っていたり、でかい音が出るオセロがあったり。冗談みたいな試作品にウケていたら実は本気で将来の需要を狙っていたりして驚かされた。

何かすぐに使えるものよりは、むしろ作りかけの試作品や熱い語りがSXSWらしい出し物なのかもしれない。 勢いで出展した割にはウケていたが、出資や協業に積極的な人もたくさん来ていたので、そういう目的で展示を考えていたらそれはそれで面白い展開になっていたかもしれない。

  • 高田徹 (プログラミング、装置製作、出展、文責)
  • 東信伍 (コンセプト、デザイン、装置製作)
  • 時田浩司 (装置製作)
  • 機材・展示協力: 株式会社レイ
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実家に帰省するには交通費と時間がかかるので、実家のリアルタイム映像を部屋の壁に投影することで『バーチャル帰省』をしてみた。我々自身に内面化されてきた実家性の脱構築を通じて「実家とは何か」を問い直す野心的な試みである。

年の瀬だが今年は実家に帰る予定がない。実家が遠いと交通費や行き帰りにかかる時間も馬鹿にならないので、毎年実家に帰るのがおっくうになってくるのだ。とはいえ、「年末なので家族とビールでも飲みながらゆっくり紅白でも見て団らんの時間を過ごしたい」という曲げられない強い想いもある。そこで、部屋の壁に実家のSkype映像を投影して、「バーチャル帰省」をすることにした。図でいうとこういうことだ。

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こんなに大きく出すような図でもなかったかもしれない

ちなみにVirtualという言葉は「仮想の」と訳されることが多いが、これは誤訳であり、「実質の」という訳がよりふさわしいのだそうだ。物理的にそこにはいないが、実質上は帰省しているのと同じなので『実質帰省』である。さらに言えば『即時実質帰省システム』であるが、そこまでいくと軍事兵器としてアメリカの国防省に配備されていそうなので今回は単純に『バーチャル帰省』と呼ぶことにする。

「映像だし、しかも人の家」という二重のバーチャル実家体験

やることはだいたいわかった。しかし、部屋の壁に映像を投影するためのプロジェクターはどうするのか。それは心配に及ばない。プロジェクターを個人で何台も持っているメンバーの高田さんがいるのだ。実家に帰省する予定があるというので、プロジェクター1台を貸してもらって、高田さんの実家からSkypeで接続してもらう。高田さんの実家にも当然のように、プロジェクターとスクリーンがある。完璧だ。

  • 2

    大晦日の夕方、Skypeのビデオ通話で広島にある高田さんの実家に接続する。お邪魔します

  • 3

    高田さんの家からこちらを見た様子。プロジェクションに理解のあるおばあちゃんでよかった

お気づきかもしれないが、そうなると接続する先は自分の実家ではない。物理的に帰省するわけではなく、そのうえ自分の実家ですらないとなると二重にバーチャルな帰省だが、バーチャル実家は実家でありさえすれば誰の家でも大して変わらないという割り切ったスタンスが見え隠れする。ゆとり世代の悪いところが出てしまった。

ものすごく近くて、ありえないほど気まずい

壁一面に表示されているほうがよりリアルな「つながってる感」があって良いはずだ。そう思ったので6畳の部屋の壁一面のサイズのスクリーンを買った。(Amazonで2000円ぐらいで売っている)Skypeでビデオ通話をつなぎ、意気揚々と「つながれ!バーチャル実家!」とばかりに投影してみた様子がこちらである。

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大きいおばあちゃんに見下ろされる体験

なんというか、圧迫感がすごい。実家というより「悪の組織の幹部と、その手下」みたいな構図になってしまった。団らんどころの騒ぎではない。ヘマをすると床に穴が空いて消されそうな雰囲気さえある。

そして、気まずい。向こうは鍋をつつきながら「近所のお好み焼き屋はまだやってるのか」みたいな年末の実家っぽい話をしているが、その様子と真正面に対峙し続けることには異様なまでの気まずさを感じている自分がいる。それもそのはず、思い返せばこの大きさで目の前にずっと人が居続けることなど日常生活では起こらないのだ。

マイクの性能的にも会話が全て聞き取れるわけではなく、「目の前にいるのに話の内容が理解できない」という状況も気まずさに拍車をかける。実家と繋いだあとはゆっくり本でも読んでいようと思ったが、実家とはこうも落ち着けないものだったか。そのうち、自分たちは本当に高田さんの実家に歓迎されているのだろうか…と不安な気持ちになってくる。

向こうは鍋を食べているのにこちらは何も用意していなかったのも気まずいのではないか。「オードブルを買ってくるから」と理由をつけて一旦退避する。年末のスーパーをうろつく僕の頭にはっぴいえんどの名曲がよぎる。

春よ来い / はっぴいえんど
作詞 松本隆

お正月と云えば 炬燵を囲んで
お雑煮を食べながら
歌留多をしていたものです

今年は一人ぼっちで 年を迎えたんです
除夜の鐘が寂しすぎ
耳を押さえてました

家さえ飛び出なければ 今頃皆揃って
お目出度うが言えたのに
何処で間違えたのか

実家の本質は「テレビ」だった

何処で間違えたのか考えてみたが、どうやら、部屋の壁一面に、しかも自分たちから見て真正面に大きく投影したのが一番の間違いだったようだ。そして、実家にあってこの部屋には不足しているものが一つだけあった。テレビである。

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バラエティ番組のVTRとワイプぐらいのサイズ感。安心できる比率

テレビのある部屋に移動して、バーチャル実家をテレビの横に控えめなサイズに投影する。たったこれだけで実家フルネス(実家のようにくつろげるさま)が著しく高まった。自室と高田さんの実家で同じNHK紅白歌合戦にチャンネルを合わせてくつろぐことで、基本的にはテレビを眺めながら食事しつつ、時折番組の演出に突っ込みや皮肉を挟んだりして笑い合うことで会話が発生する空間、すなわち「実家」がここに誕生した。

そう。テレビだったのだ。実家とは「テレビを中心として、その辺縁に立ち上がるコミュニケーションによって規定される共同空間」だったのだ。今まで「テレビ普段あんまり見ないんスよね…」とスカしていた僕だったが、これほどテレビの存在に感謝した日はない。テレビよ、今まで実家をありがとう。

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    あ〜これはいいですね、これはいい『実家』だ

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    時間が経つほどにリラックス感が高まり、体勢が崩れていくのが本物のバーチャル実家の証拠

まとめ

「実家に帰ることなく実家にいるような団らんを感じたい」という矛盾した思いから始まった『バーチャル帰省』だったが、「言葉の聞き取りやすさが一体感を得るために実は重要」「映像が大きすぎると逆に日常感が薄れる」「スクリーンが真正面でないほうが落ち着ける」など、思いもよらないところでテレプレゼンス技術に応用可能な知見を得た気がする。

そして擬似的に帰省を生み出そうとすることで「実家とは何か」ということへの深い洞察が得られた。「人間とは何か」を知るために精巧なアンドロイドを作る博士と同じようなことだ。「実家とは何か」と聞かれれば、今後は「実家とは、テレビである」と答えることにしよう。禅問答のようだが、そこにはリアルな実感がある。

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デイリーポータルZが主催するイベント、「Webメディアびっくりセール」に参加させてもらえることになったので、「ブラジルにつながってる穴 ミニ」を制作して展示した。ミニといっても1m四方ある。

「普段Web上で活躍するメディアやライターの方々が、敢えてリアルの場で紙の本などのグッズを販売する」というコンセプトのイベントだが、そこにメディア部活動を標榜する我々が乗り込んで「穴」を展示する。Webメディアとは一体何か、という根本的な部分に疑問を投げかける問題作である。現代アートの旗手、マルセル・デュシャンが美術の展覧会で「泉」を展示したのと同じだ。

イベントは大盛況で、約100人が次々と穴に首を突っ込むという快挙を成し遂げた。しかし、そこに至るまでにはアクリル半球を紙ヤスリでこすりまくったり大量の鉄の棒を運んで組み上げるなどの苦労と工夫があった。まずはそこからじっくりと紹介したい。

友人の友人の友人にブラジルの映像を撮ってもらう

前回作った「ブラジルにつながってる穴」は人が乗れるようにするための大きな台と、プロジェクターを置くための空間として、縦横3m四方のスペースを必要とした。しかしグッズ販売が主体のWebメディアびっくりセールのブースは長机半分。さすがに半分だと机をどけることもできないので、枠を2つ買い、縦横1.8mの空間を確保する。ここに収めるため、「ブラジルにつながってる穴 ミニ」を制作することにする。この段階でイベントまで残り1ヶ月。

前回はYouTubeで拾ってきたリオのカーニバルの360°動画を流していたが、ふつうのブラジルの日常と接続したかったので、(あと、お金をとってYouTubeの動画を見せるのはさすがにどうなんだと思ったので)ブラジル在住の人をSNSで募集しまくって探した。イベント2週間前に見つかったのは友人の友人の友人でブラジル在住のカメラマン、鶴田さん。サンパウロのパウリスタ通りなどブラジルの日常の光景を撮影してきてもらった。

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ブラジル在住の鶴田さんはすぐさま撮影場所を4つ提案し、さらに友人に依頼して撮影機材の360°カメラを揃え、その週の日曜日には撮影を終えてサンパウロの360°動画を送ってくれた。こちらが申し訳なくなるほど仕事のできる人だった

でかいものを作るのは大変

360°スクリーンとなるアクリル半球は少し小さめの直径600mmのものを使用する。透明のものと乳半色のものがある。透明なものは12,000円ぐらいで、プロジェクターで投影するのに便利そうな乳白色のものは22,000円ぐらい。費用をケチって透明のものを選んだ結果、半球を紙ヤスリでひたすらこすって白く曇らせる「アクリル地獄」に足を踏み入れることとなる。

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    この透明度を出すためのアクリル工場の方々の苦労を、台無しにします

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    最初に手をかける背徳感といったら

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    どこからこすり始めたかわかるよう、マスキングテープを貼っておくライフハック

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    紙やすりで5周こすった状態。この段階で「白いやつ買っとけばよかった…」という顔をしている

半球のほかに、それを支える台が必要だ。前回のように既製のちょうどいい台はなさそうなので、自作することになる。ここでの問題は「でかいものを作ったことがない」ということである。普段は猫背でキーボードを叩いて暮らしているので、IKEAの本棚以上にでかくて複雑なものを作ったことがない。人が乗っても折れない、頑丈な枠が必要だ。インターネットで「枠」の作り方を調べた結果、強い棚をDIYするときなどに使う「鉄アングル」というものが良さそうだとわかる。鉄アングルはあらかじめ穴の空いた、山形に折れ曲がった細長い鉄板である。これなら木材と違って、穴を開けずに何度でも組み立てたりバラしたりできるし、木材より薄くかさばらない。

届いてみて初めてわかったこととして、鉄アングルは重い。鉄でできているから当たり前といえば当たり前なのだが、束になるとサイズに対する重さが尋常ではなく、コンパクトな見た目に油断して持ち上げようとすると腰を破壊する危険がある。家に届けに来た佐川のおっちゃんに「何が入ってるんですかこれ…?」と言われてしまい申し訳ない気持ちになる。(2回目以降はカートで届けに来た)

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    首回りの穴で怪我をしないよう、紙ヤスリをかける。さながらそういう職人

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    自宅で組み上げて、試しに映像のキャリブレーション。毎度のことながらここまでくるのに数週間かかっている

いよいよ当日

前々日になっても映像の編集がうまくできず8万の編集ソフトを買いそうになりつつもなんとか準備を終えて当日。出展者の受付は10時半からだが、我々は組み立てがあるので9時半に集合することに。

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    電車で「亀仙人…」と噂されながら到着

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    参加者が集まってくる前に着手するが、時間がかかりすぎて結局ギリギリだった

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    明らかにやってることが周りと違う

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    なんとか設営できました。eの字がはがれかけてる

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お金を取って穴を覗かせる側の責務として、できるだけ胡散臭くした

早めに来て3人がかりで準備した甲斐あって12時のスタートと同時に完成。(本当はちょっとだけオーバーした) 体験価格は100円に設定したが、今回はWebメディアびっくりセールのテーマに合わせ、「ステマ割」を導入。Twitterなどで絶賛することで値段が無料になるというキャンペーンである。普段は御法度のステマを堂々と楽しんでもらおうというコンセプトである。

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開始直後の写真。人の量と熱気がすごい。11月だというのに半袖での来場を推奨されていた

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    大体どうなってるのかは外から見てもわかるのだが、穴の魅力に誰も抗えない

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    特に子供に大人気だった

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    ブースの横を通るたび、通算10回ぐらい首を突っ込んでいた少年

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    光ってる穴自体も絵になるらしく、観光スポットみたいに人々が写真を撮っていく

Webメディアびっくりセールは大盛況だった。イベントの内容と合っているのかも謎なのでブラジルにつながってる穴のブースに人が来るかどうか不安だったが、ふたを開けてみれば人々が穴に行列をつくり、次々と笑顔で穴に頭を突っ込んでいく光景が広がっていた。走馬灯でみるかもしれない光景である。Webメディアでもなければ意味もわからない我々の出展を受け入れてくれたデイリーポータルZの方々の懐の広さに敬意を表したい。デイリーポータルZの事前PRに「要は雑なチームラボみたいなことです」とわかりやすく書いていたが、本家のチームラボの高須さんが通りがかりざまに「いいね!ナイス!」と言ってくれたので公認ということにしておく。

お客さんに説明するときに「本当はブラジルにリアルタイムで繋ぎたいんですけど、時差が11時間あるからいま真夜中なんですよね(笑)」と冗談っぽく言っていたが、本当にブラジルにリアルタイムで繋ぎたい。どちらかがオールナイトのイベントだったらいけるだろうか。ブラジルでクラブイベントをやってる人がいたら教えてください。

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    中はこうなっていた

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    終わったあと3人でひっそり打ち上げをした店の、強引な値上げ

ブラジルにつながっている穴を作る

Brazil eyecatch

漫画などでよく、地面に穴を掘り進めていくと地球の裏側のブラジルに辿りついてしまうという表現がある。それになぜか惹かれていた。もしかすると、日常の世界と未知の世界の唐突な出会いに惹かれていたのかもしれない。そういうわけで、「ブラジルにつながってる穴」を作ることにした。

Brazil1

ベニヤ板と芝生を除いて、プログラマの高田さんの会社の倉庫に置いてあったものを利用させてもらった。デジタルサイネージやイベントを行う会社なので、倉庫にはディスプレイやプロジェクターが無限個ある。一番凄いのは高田さんの会社である

「ブラジルにつながってる穴」は、半球スクリーンに4台のプロジェクターを組み合わせて360度映像を投影する、広義のバーチャルリアリティ装置である。もちろんブラジル以外のどこにでもつなぐことができるが、目標はブラジルなのであくまで「ブラジルにつながってる穴」だ。これを体験するためにユーザーは穴の前にひざまずき、頭を穴に突っ込まなければならない。

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    ベニヤ板に「こんな具合かな?」と穴を開けて置いてみたところ。ぎりぎり「装置」と呼べる風貌。人が乗るには心もとない大きさだったので、後日板を継ぎ足すことになる

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    同じく穴を開けた芝生を敷く。こう見ると完全に地面にあいた穴にしか見えない。床からの高低差はあるが、本物の地面だって海抜数百メートルのところにあるのだ

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    適当な場所に置いた4台のプロジェクターから半球にきれいに360度映像を映すために、表示位置や歪みを自動でキャリブレーションするソフトウェアを制作。半球の中心に360度カメラを設置して使う

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    このように、地面にあいた穴に首を突っ込んで体験する。ダチョウは外敵から逃げるかわりに地面に首を突っ込んで見えなくするという俗説を思い出させる。滑稽な見た目に反して非常にハードな体勢

手始めにカーニバルの360度動画を投影して穴に頭を突っ込んでみたところ、突然地面からブラジルに飛び出してしまったような臨場感を得られた。一方でこの姿勢は頭に血が上るので、30秒程度が限界だということ、そしてこの装置を体験している様子は、他のVR装置と比較して非常に滑稽なものとなることがわかった。

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芝生のない状態。写真には写らないが苦悶の表情を浮かべている

中の様子がどうなっているか、動画でまとめた。

今後はブラジルに受像器と360度カメラを設置してリアルタイム360度映像を投影し、装置を小型化して実際に地面を埋め、常時ブラジルにつながっている穴として街中に設置することが目標である。

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    ひとまず完成記念撮影をしたところ、バンドのアー写みたいな写真が撮れた

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    疲れきったメンバー。サッとやったように見えて土日を5日ぐらいかけている。このあと3人で塚田農場に行った

  • 東信伍 (コンセプト、デザイン、装置製作、文責)
  • 高田徹 (プログラミング、装置製作)
  • 時田浩司 (装置製作)
  • 機材・展示協力: 株式会社レイ